インタビュー・対談シリーズ『私の哲学』
私の哲学Presents
第29回 駒崎 クララ 氏

魅力的な笑顔の裏に、熱い思いと強い意志を持つ駒崎クララ氏。キャビンアテンダントのセカンドキャリア支援に情熱を傾けている氏に、幼少期やCA時代のエピソード、今後の活動展開などについてお話しいただきました。

Profile

29回 駒崎 クララ(こまざき くらら)

株式会社KoLabo 代表取締役社長
1982年兵庫県神戸市生まれ。神田外語大学外国語学部スペイン語学科(現:イベロアメリカ言語学科スペイン語専攻)卒業。5歳から10歳まで、両親と共にヨットで世界中を航海して過ごす。大学卒業後、アシアナ航空にて7年半キャビンアテンダント(CA)を勤める。その中で、航空会社の枠を超えたCA同士の情報交換の必要性を感じ、CAのためのSNS『CREW WORLD』を開設。2012年、株式会社KoLaboを設立。『CREW WORLD』運営のほか、CAのセカンドキャリア支援のための人材紹介事業やコーチングを行っている。

※肩書などは、インタビュー実施当時(2014年6月)のものです。

ヨットで過ごした日々

5歳になる少し前のことです。父がヨットで航海へ出ることになり、私は迷わず「ついて行きたい!」と言い、「ならば私も」と、母も一緒に家族3人で航海に出ることになりました。両親には心配もあったと思いますが、きっと素晴らしい経験ができるとの考えで、私を連れて行ってくれました。しかし父は、私が航海の厳しさを知って、すぐに帰りたがるだろうと、2ヶ月後の飛行機チケットを持って出発しました。ところが2ヶ月後日本に帰国すると、私はどうしても海に戻りたいと猛烈にアピール。再び家族で航海を始め、トータルで5年ほどヨットの上で生活していました。

航海は常に危険と隣り合わせだと、ことあるごとに教えられていました。父は安全な航路を選んでくれていたので、海で怖い経験をした記憶はありませんが、航海自体でつらかったことと言えば、あまりアイスクリームを食べられなかったことです。ヨットに冷蔵庫はあるのですが、冷凍庫がありません。国によっては、食事は安くてもアイスクリームは高いことが多くて。子どもだった私には、それが一番つらいことでした。

健康診断で思わぬことが判明

 フライトで一番重要なことは、“保安業務”です。その役割を担っているキャビンアテンダント(CA)は、子どもの頃、危険と安全が隣り合わせの生活で身につけた感覚を生かせると思い志望しました。30社くらい受け、日系の航空会社では最終段階の健康診断までいきました。しかしそこで、鼻腔が塞がっていることが判明したのです!日本人の7人に1人はいるそうですが、先天的に鼻の骨が曲がっていて、鼻腔を塞いでしまっていたのです。すぐに鼻腔を広げる手術を受け、ご縁があったアシアナ航空に入社することができました。それまで私は、歯を磨いている間ずっと息を止めていました。鼻呼吸ができずに口で呼吸するので、間違えると歯磨き粉が喉に入ってしまうからです。海では、鼻から海水が入ることはなかったので、なぜみんな苦しがるのかわからず悠々と泳いでいました。入社後の水中訓練で、生まれて初めて鼻から水が入った時の衝撃は忘れられません(笑)。

3年くらいで辞めようと考えていたCAの仕事ですが、最高に楽しくて、結局7年半勤めました。フライトは毎回達成感があります。その都度チームを組むので、毎回チームのリレーション作りから始まり、一人ひとりが自分のパワーを200%出し切り、無事到着したときのやり切った感が、運動会で感じる達成感のようで楽しいのです。初めて会った、自分と違う考え方をする人と仕事することに、抵抗はありませんでした。いろいろな国に行き、いろいろな人に出会った経験がこうしたことに生きていると思います。そうして充実した毎日を送っていましたが、ある時怪我をしてしまい、フライトできなくなってしまいました。会社は回復するまで待つと言ってくれたのですが、以前からやってみたいと思っていたことがあり、これはもしかしたら転機かもしれないと退社を決断しました。しかし、飛行機を降りるという決断は、私にとってとてもつらいものでした。

「思いついたら即行動」で築いてきたネットワーク

CAをしていたときから、航空業界内、特にCAの情報交換・共有する場の必要性を感じていました。アシアナ航空を退社して最初にしたことは、CA専門のSNS『CREW WORLD』の開設です。私は、思いついたらすぐに行動するタイプ。鼻の手術も、鼻腔が塞がっていてはCAになれないと思ったら、何の迷いや不安もありませんでした。『CREW WORLD』の運営以外には、CAのセカンドキャリア支援を行っています。CAは、CAという仕事に憧れてなった人がほとんどなので、他の職業を調べたり、会社訪問したりという経験があまりありません。“空の上”という特殊な労働環境のため体調を崩すことも少なくなく、生活リズムが比較的安定する一般企業へキャリアチェンジしたくても、CA以外にどういう仕事があるのかわからないし、自分にどういう仕事が合っているかもわからない。こういった悩みが多いように思います。一方で、CA経験者を採用したいという要望は様々な会社にあり、今年から人材紹介事業も始めました。CAが抱えている、キャリアチェンジに対する不安を少しでも和らげ、新しいステージへの第一歩に寄り添う存在でありたいと思っています。これまでCAに限らず、目標を達成した後に次のステップに進めない人を多く見てきました。何とかしてそうした人たちを応援したい。人が人生においてモチベーションを保つためにはどうしたら良いか、というのが私の活動の軸になっています。

設立当初、シェアオフィスを仕事場としていました。それは、様々な業種の方が集まっているので、わからないことをすぐに聞けたり、相談したりできると思ったからです。実際、みんな親身になって教えてくれました。また、たくさんの方々にモチベーションに関するお話が聞きたくて、様々なサミットに何度も足を運びました。そうやって積極的に行動してきた結果、いろいろな方と出会い、そこから新しいご縁が生まれ、仕事の幅やネットワークが広がり、私自身の成長にも繋がっています。これからもご縁を大事にし、感謝の気持ちを忘れず、行動し続けたいと思っています。まだ準備段階なので詳しいことはお話しできませんが、今、新たな夢を実現するために動いています。これからも積極的に行動し、CAをはじめ、すべての女性を応援・支援する活動を続けていきます!

僕は、自分の決めた目標に向かって一生懸命努力している方が好きです。努力し、実際に行動して形にしている方のエピソードはとても参考になります。
今回の駒崎クララさんのインタビューでは、小学生時代をヨットで過ごされた経験談や、鼻から呼吸ができないという状態ではキャビンアテンダントになれないため、迷わず手術に踏み切ったというお話にすごい方だと思いました。何事もやってみなければ、結果がどうなるかわかりません。行動する勇気のある駒崎さん、きっと次のその一歩も想像のつかない展開になると思います。

『私の哲学』編集長 DK スギヤマ

2014年6月 株式会社ノートルメルシーにて  編集:楠田尚美  撮影:鮎澤大輝